ソウルで愉しむ日本の戯曲三演目
演劇を聴く、違う言葉で聴く、よその国で聴く
第9回 現代日本戯曲朗読公演
2020年2月21日(金)~23日(日)
ソウル文化財団 南山芸術センター
日本の現代戯曲が韓国語に翻訳され、韓国人アーティストの演出・出演でリーディング上演される現代戯曲朗読公演。9回目となる今回は、山本卓卓『その夜と友達』が選ばれました。範宙遊泳からはプロデューサーの坂本ももが渡航し、アフタートークに登壇いたします。
全回無料。要予約。
2/21(金) 19:30
『Das Orchester』
2/22(土)15:00
『その夜と友達』
2/23(日) 15:00
『Birth』
17:00
シンポジウム
『韓日演劇交流の未来』
TEL +82-2-758-2150
FAX +82-2-758-2109
8-19 Yejang-dong, Jung-gu, Seoul
ソウル地下鉄4号線
明洞(ミョンドン)駅1番出口より徒歩5分
主催:韓日演劇交流協議会
共催: (財)ソウル文化財団 南山芸術センター
助成:韓国文化芸術委員会(Arts Council Korea)
韓国での上演にあわせて、英語字幕付きの記録映像を無料公開いたします
国内外問わず、上演をご検討いただける劇場関係者の方、戯曲利用をご希望の実演家の方は、お気軽にお問い合わせください。
We are looking for an opportunity to perform this work overseas.
Please feel free to contact me if you like this work.
■上演記録
範宙遊泳『その夜と友達』
作・演出:山本卓卓
出演:大橋一輝 武谷公雄 名児耶ゆり
2017年初演 STスポット
翻訳:寺田ゆい
撮影・編集:須藤崇規
Theatre Collective HANCHU-YUEI
『This Night and His Friends』
Playwrite and Director:Suguru Yamamoto
Cast:Kazuki Ohashi
Kimio Taketani
Yuri Nagoya
Subtitle:Yui Terada
Video shooting and editing:Takaki Sudo
「韓国演劇」2月号にインタビューが掲載されました
山本卓卓が日本語で回答したものとあわせて、編集部の許可を得て転載いたします
Q. 『その夜と友達』というタイトルがとても魅力的です。タイトルが持つ二重の意味、すなわち「その夜」と「夜という名の友達」という、軽快ながらも軽すぎず、暖かみのある雰囲気が作品全体を流れているように感じます。作品の構想と、こういうタイトルをつけられた特別なきっかけがありますか?
A. 毎回新しいことにチャレンジしようと考えていて、前作のアンサーのような気持ちで新作を構想します。これまでの作風で、友達というテーマをなかなか僕が扱うことはありませんでした。今作において、レパートリーのひとつとして書いてみたいと思ったのと、僕がよく使用する非人間の擬人化表現を考えていった先に、「その夜と友達」という不思議なタイトルが思い浮かびました。
Q. 『その夜と友達』は友情に関する物語ですが、三人のエピソードを見ると、そこに作家の個人的な経験が反映されているように感じられます。自身のどのような経験が作品に溶け込んいると思いますか? また、実際の体験をどのように架空の世界に拡張したのか、その過程についてお聞かせ下さい。
A. 僕には韓国の友達がいます。大学生の頃に過ごした情に厚い彼との日々は、間違いなく今作に反映されていますし、中学からの日本人の親友との思い出もまた大きく影響を受けています。けれどもそれらは今作においてのとても小さい種であり、多くは想像によるものです。経験したことのあるほんの小さな種から、自分の欲望や願望や美学を利用して架空の世界へと発展させていきました。
Q.この物語の登場人物たちは、奇妙にねじれた時間の背景の中に存在します。作品が上演される現在を「過去」として設定し、未来から現在を眺めるような構造にした意図は?
A. 後悔というわけではないのですが、僕自身多くの「こうであったかもしれない未来」を抱えています。あの時あれをしていなかったら今のこれがない、ということがたくさんあるのです。この奇妙な、そして奇跡的な状態について語るには時間軸を歪める必要があったからです。
Q. 最近、韓国ではMe Too 運動をきっかけに、性少数者(LGBTQ)の問題やフェミニズムを直接的、あるいは間接的にテーマにした作品が多く発表されています。この作品でも、夜という人物が同性愛者として経験する差別や暴力が描かれており、韓国の観客は非常に関心を持つと思います。三人の友情を語るうえで、そこに同性愛の問題を取り入れたのは、どういった意図でしょうか?
A. 夜というキャラクターについて掘り下げていく時に、どうしても彼について謎な部分があり、これはいったい何なのだろうと考えていくうちにこの問題が露わになりました。人に語ることができない問題を抱えている人は多くいます。その苦しみや孤独は想像を絶するほどです。語らないことで身を守っているのです。演劇や芸術がこうした物語を描くことによって、彼らが抱える痛みや孤独に少しでも寄り添えないかと思っています。
Q. 『その夜と友達』という戯曲は、時間と空間の使い方以外は、どちらかというとオーソドクスなセリフ劇に近いと思います。 しかし、山本さんはこれまで、さまざまなスタイルの作品を作ってこられましたね?たとえば、一般的な口語体で表現されるセリフという舞台言語に、スライドや字幕で書き言葉をぶつけたり、 演技ではないダンスのような動きを駆使したり、光と影を使ったり、などです。どのような意図でそのような形式を用いたのか、どんな形式を追求しているのか、お聞かせ下さい。
A. 僕が追求しているのは表現の「多様さと豊かさ」です。さまざまなコミュニケーションが溢れる現代にいて、演劇がたとえばSNSを描けないのは悔しいのです。文字や映像でのコミュニケーションを、現代に生きる僕たちは自然に行なっています。この自然さを描きたいのです。
Q. これまでアジア諸国のアーティストと共同制作をされてきました。また現在は、数ヶ月間、アメリカに滞在中と聞いております。海外との交流によって、演劇に対する取り組み方に変化がありましたか?また今回、山本さんの作品が韓国語に翻訳、出版され、ドラマリーディングという形式ながら、韓国の舞台に上がるには初めてですが、韓国の読者と観客に一言お願いします。
A. 海外での経験はとても大きな変化を僕にもたらしました。それまでは作品とコミュニケーションは別物だと考えていたようなところがあり、作品がコミュニケーションをもたらすものだなどとも考えていなかったように思います。しかし近年では、作品こそがコミュニケーションであると思うようになりました。今作を観ることによって、韓国のみなさんが抱くもの、すべてを尊重したいです。はじめまして。どうぞよろしくお願いいたします。
2/21(金) 19:30
『Das Orchester』
作:野木萌葱
翻訳:イ・ホンイ
演出:チョン・ジンセ
出演:
ソン・サンギュ
チョン・ソヌ
ソ・ジウ
チャンミ
キム・ジュヌ
チャン・ウソン
チャン・セミ
キム・シンノク
「この楽器が、武器だった…。」 芸術と政治の不協和音に揺れ、これに立ち向かう世界最高レベルのオーケストラ指揮者と団員達の苦悩を描く。野木萌葱が19歳で執筆した戯曲を、昨年22年ぶりに再演し、埋もれていた傑作と評された。時代を超えた芸術と政治の対決、いまだ古びぬテーマを、劇作家、演出家、評論家としてマルチに活動するチョン・ジンセの演出でおくる。
(アフタートーク=劇作家 野木萌葱×演出家 チョン・ジンセ)
2/22(土)15:00
『その夜と友達』
作:山本卓卓
翻訳:イ・ジヒョン
演出:ミン・セロム
出演:
キム・ジョンフン
チェ・スンジン
ハ・ジウン
イ・ジョンミ
「俺ら親友だよな?」 二人の男と一人の女の友情を描く。他者を理解すること、理解できないこと、理解されたいこと、理解されないこと…。
タイ、マレーシア、インドなどアジア諸国やニューヨークなど、海外公演や国際共同制作に積極的に取り組み、他者とのかかわりを模索する山本卓卓。彼の戯曲が韓国で紹介されるのは今回が初となる。
いち早く「me too」が盛り上がりを見せ、価値観の変化が進む韓国で、「人が大好き」な演出家ミン・セロムが演出を手がける。
(アフタートーク=劇団制作 坂本もも×演出家 ミン・セロム)
2/23(日) 15:00
『Birth』
作:シライケイタ
翻訳:ソン・サンヒ
塚口知
演出:パク・クニョン
出演:
ジ・ドンイク
イ・ホヨル
キム・ドックァン
「オレだよ、オレ…」母のぬくもりを知らない男たちが受話器の向こうに聞いたのは、母の声だった。
シライケイタの初期代表作で、劇団温泉ドラゴンの出世作でもある『Birth』。2014年と2015年に韓国ツアーを行い、密陽演劇祭で戯曲賞を受賞する快挙を遂げた。男優を中心とした骨太のドラマを得意とする作家の原点であり、シライを韓国に強く結びつけ、日韓の歴史に目を向けさせるきっかけともなった。演出を手がけるのは、シライが敬愛する劇団コルモッキルのパク・クニョン。
(アフタートーク=劇作家 シライケイタ×演出家 パク・クニョン)
2/23(日) 17:00
シンポジウム『韓日演劇交流の未来』
戦後最悪とも言われる日韓関係悪化の中で、演劇交流の未来を探る。
[パネラー]
チャン・ジヨン(国民日報記者)
コ・ジュヨン(プロデューサー)
太田昭(日韓演劇交流センター事務局長)
シライケイタ(劇作家・演出家)