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2017.1.14(sat)-20(fri) 福原冠


▼1.14(Sat)

現在1月28日深夜2時46分、プネのホテルにいます。

プナと呼ぶ人もいるなと思って調べてみたら植民地時代の名称なのだそう。ムンバイより少し南、街の40パーセントが緑らしい。納得。木が多くて気持ちがいい。

まずいまずい、今日の日記になってしまう。

1月14日!この日は最後のシーンを稽古をした。冒頭と同じく全員が舞台上にいる。全員動き続けながらリズムや空気を作っていきつつ登りつめていくシーン。集中力!!稽古中、このシーンのイメージはいつからあったのだろうかと不思議に思った。というのも稽古の初期のときにやったとあるゲームの延長線上にシーンがあると思ったからだ。最初からこのシーンのイメージがあってゲームがあったのか、それともその逆か。演出家の人はすごいっ。

▼1.15(Sun)

午前中のみ稽古。ひとつの箇所をぐりぐりと繰り返して一つの答えを見つける、そんな稽古だった。みんなでアイディアを出しながらひたすらに試す。こういう時間がチームワークを強くするのかなと思ったりもした。終わってから山本に誘われて買い物に出かけた。ついにインドで洋服を買ってしまったぜ。テンションぐっと上がる。買い物をしていたのは穏やかな大きな道沿い。そこに人通り多い一本入れる道があったので入ってみることにした。さっきまでの穏やかさはなく、歩くのにすこし気を張る感じの貧民街だった。店と家とゴミ捨て場が一緒の狭い空間がずらっと並ぶ。無数の鶏が狭いカゴに入れられていて、その横で肉屋が肉を売ってる。あんなのストリートファイターの背景でしか見たことなかった!自分がカメラをぶら下げて買い物袋を持った肌の色の違う人間だということに何となく緊張感を覚えた。テレビやラジオから流れるインド音楽がまた何とも言えなかった。家に帰ってフランクオーシャンのsuper rich kidsという曲を和訳したりした。後半の歌詞は今回のお芝居のあるシーンを連想させるなと思った。不思議なリンク。ロックウィズユーは覚えたので今度はスーパーリッチキッズを嗜むぜ。

▼1.16(Mon)

この日は初めて通しをした。英語だとランスルーという。日本で何となく使ってる英語がこっちだと微妙に意味が違ったり、使用頻度が低かったりする。そういうのを見つける度に小さく面白いなって思う。いつだったか、「テンポ」を合わせてというのが伝わらない瞬間があって、「リズム」と言い換えるとピンと来るというコトがあった。なんでイタリア語?というニュアンスでモモが不思議がっていた。

初めての通しでこの演劇がどういうものか、物語がどう紡がれていくか、それがまだガタガタしているけど見えた気がした。自分的にとっかかるべきポイントみたいなものが見えた。ここからもっともっと考えて試して間違えてこねていく。時間はないけど、ある時間でなにをすべきか。どこまでいけるか。家に帰ってもう一度台本を頭から読む。おす。

▼1.17(Tue)

稽古最終日。諸々を確認して二度目の通し稽古。個人としても全体としてもさらに具体的に色々と見えた。今回は範宙遊泳にいてあまりやったことのない役回りで、だからこそ挑戦したいポイントがある。これが見えてくるとさらにモノづくりが楽しくなる。よっしゃ。デリーでの生活は一先ず終了。気づけば一ヶ月以上暮らしていた。明日はバンガロール。南へ!

▼1.18(Wed)

朝早めに起きてから荷造り。バンガロールに移動のため空港へ。2台の車で向かう。自分の乗る車には山本卓卓、運転手さん、そして舞台監督チランジート。彼は若干21歳。チルは大のハードロック、メタル好き。彼はメタル好きが周りにいないのか、すごく嬉しそうに「この曲聞いてみてくれ!」とよくメタルを聴かせてくれる。分かるぜ、自分もメタルとハードコア好きだけど肩身狭いんだ。チルは車に乗る前からイヤホンで何か聴いてて頭をガンガン振っている。陽気だなあ若いなあなんてことを思って俺は笑ってしまったけど笑えたのはこの時だけだった。チルが助手席に乗るなり、「カン、この曲やばいから聞いてくれよ!」と助手席の前の蓋を開けて携帯とかに挿すプラグを見つけ出しそいつをチルの携帯にぶっ刺してかけた曲がIRON MAIDEN「2 MInuites To MIdnight」。俺は知っている。この種の音楽はわかってくれる人同士では最高にアガるけど、わからない人にはただの騒音だということを。俺はこれで何回も失敗しているから知ってるんだ。ちょっと待ってくれチル!!朝から車内で爆音はダメだ。メタルなんて以ての外!真夜中まで2分どころか今は朝だ。運転手のおじさんもとまどっている。怖い。隣に座ってる人の顔が怖くて見れない。だって朝、ふだん山本の部屋からはクラシックやジャズが聞こえてくる。そんな人がこんな悪魔の目線で語る歌なんか好きなわけない。「アイアンメイデンいいねー、俺も好きだよー」まずはチルに一リアクション。流れで隣の山本くんを見る。キレてる。完全に切れている。携帯をじっと見ているようでいてものすごい殺気。今のところ稽古場でも一緒に生活してても一回もキレているところを見せなかった彼がキレている。「このバンドのボーカルって飛行機の免許持ってるからツアーは自家用機で回れちゃうらしいよ」なにか気の利いたことでも言ってなごませたい俺。「うん。」ダメだ。詰んだ。やめようチル。君の真後ろに座ってる演出家がキレているんだ。そうか君は席的に対角線上の俺しか見れないもんな。「なんか冠の好きな曲ある?」これに答えたら俺も寝たいという感じをアピールしよう。「俺はやっぱNumber of the beastかな」「おーくそやばいねかけよう」「うん、、」「おーかっけえ、あ、カン、この曲知ってる?」ダメだ質問がCHILLの質問が止まらない。ごめん山本くん。もう一度彼を見るとパソコンを開きイヤホンで別の音楽を聴いている。最悪だ。この曲やばいっしょとかけてる傍で別の曲きかれるのはDJとしてはアウトだCHILL。だめだこれは逆にCHILLを満足させてきって疲れてもらうしかない。ただこの場合、彼の若さ故のタフさで爆音のまま空港に着いてしまうことも有りうる。そのばあい地獄だ。KILLSWITCH ENGAGE、ENDZWECK、UNEARTH辺りを立て続けにかけたと思う。するとチルは寝た。空港まで行くのにこんな疲れるとは思わなかった。

▼1.19(Thu)

バンガロールの劇場にてリハーサル。再び通した。ごつごつしているが流れが生まれてきたと思う。やっとこさ。細かい立ち位置やプロジェクターの光に入っているのか外れているのか、影はどういう状態がよいかなども確認していく。ヘトヘトになって電気つけっぱなしで寝てしまった。

▼1.20(Fri)

バンガロール初日。ランガシャンカールという劇場。雰囲気があってとてもいい劇場だなと思った。日本だと浜松にある四季劇場に似ていると思った。もちろん立ったことはなく、大学生の時にアルバイトで舞台の仕込みのバイトで舞台上に上がった記憶がある程度なのだけど。声もとてもよく響く。響きのことを英語でアコースティックというらしく、ほおっとなった。客席数は250~300ぐらいで客席にかなり勾配がある。なので稽古をしていたよりかなり目線をあげてやる。バンガロールに着いたぐらいからずっと気になっていた左目の腫れが治らないまま小屋入り。焦る。近くの薬局で薬用の目薬を購入。インドは処方箋が必要な薬も薬局でポンと手にはいる。薬はかなり効いて。夜の本番までには腫れが引いたので驚いた。ゲネをやって本番。 みんな気合い漲っていた。終演後多くの人に話しかけられたり握手を求められたりした。終わって飲みに行く道で卓卓が「ほんとに初日空けたんだね。夢の中にいるみたい」と言っていた。それぐらいここ数日詰めていた。さあここから。この日も電気つけっぱなしで寝てしまった。

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Theatre Collective HANCHU-YUEI

 2007年より、東京を拠点に海外での公演も行う演劇集団。

 現実と物語の境界をみつめ、その行き来によりそれらの所在位置を問い直す。

生と死、感覚と言葉、集団社会、家族、など物語のクリエイションはその都度興味を持った対象からスタートし、より遠くを目指し普遍的な「問い」へアクセスしてゆく。

 近年は舞台上に投写した文字・写真・色・光・影などの要素と俳優を組み合わせた独自の演出と、観客の倫理観を揺さぶる強度ある脚本で、日本国内のみならずアジア諸国からも注目を集め、マレーシア、タイ、インド、中国、シンガポール、ニューヨークで公演や共同制作も行う。

 『幼女X』でBangkok Theatre Festival 2014 最優秀脚本賞と最優秀作品賞を受賞。

『バナナの花は食べられる』で第66回岸田國士戯曲賞を受賞。

090-6182-1813

(合同会社範宙遊泳)

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